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娚の一生 4巻 結婚

  • 西 炯子
  • 発売日 : 2012/09/24
  • 出版社/メーカー : 小学館

…多くの女には どんな不幸な結婚でも
「それでもしてるほうがいい」と思う“季節”がある


年の差夫婦・つぐみさんと海江田教授がカムバック!娚の一生4巻です。今巻はなんとも贅沢なラインナップなんですよ!二人の結婚後のストーリーを描いたスピンオフ7話が収録されているんですが、主役の二人だけでなく、これまでの主な登場人物の“その後”が惜しげもなく描かれているんです。
西園寺さん、マコトくん、秋本さん。さらに、海江田の初恋の人・つぐみの祖母。そしてなんと、海江田の実の親も。

そういえば1巻しか感想書いていないわ… せっかくの新刊なので、先にこちらの感想書いちゃいます♪

この作品は登場人物がアラサー以上なので、「マジムカつく~」とか「超好き!」で全てを片付けられる若かりし頃の恋愛・人間関係とは違い、簡単には言葉にできない想いが沢山ある。要は、重い。やるせない気持ちや行き場のない想いやらが、“会話の間”や“空気”からジワジワと滲み出してきます。

結婚式前夜の西園寺さん。
海江田を騙して、二人でフェリーに乗った彼女は。『結婚しても きっとあたくし一生  一方的な片想いとはいえ、海江田への恋心は彼女なりに本気だったようです。



残っている気持ちの収め方は人それぞれ。
翌日の結婚式での西園寺さんは、どこか晴れ晴れとした表情で、切なくも清々しい気持ちになりました。 お次はマコトくん。
子供の悩みは時に大人よりもずっと切実です。



母親の新しい“オトコ"を好きになれず、居場所を求めて神奈川からはるばる海江田夫妻の元へやってきたマコト。
『ずっとここにいられたらいいのになー!』と楽しそうに過ごしながらも、心の中では、母親は自分がいない方がいいんじゃないか… という悲しみと不安を抱えています。

仮にそうだとしても、子供のうちは自分で生活の基盤を作り、居場所を作り出すことはできない。誰かが「ここにおいで。」と居場所をくれる幸運にめぐり合うこともあれば、そのまま、無い居場所に無理矢理居続ける苦痛と戦い続ける運命もある。
幼い頃に親に捨てられた海江田の、マコトへの想いが深くて温かいんですよ。本当に母親がマコトを引き取りにこないのであれば、マコトの居場所を自分の元に作ろうと思っている。

『ぼくは あいつが笑てるのを見てるだけで 涙が出そうなんや』マコトが無事に母親と共に帰っていったあと明かされた本音から、海江田がどんな幼少期を過ごしたかが透けて見えて胸が痛みます。

さて、つぐみの同僚だった秋本さん。
ある土曜日、突然羽田空港から電話をかけてきて、つぐみの元へ1泊2日の旅行にやってきます。この秋本さんらしからぬアポの取り方から、なにやら不穏な空気を感じます…。

同僚と結婚して幸せな生活を送っているかと思いきや、いつもと様子が違うことに気がついたつぐみ。言われもしないのに聞けないまま、二人は翌日空港で別れるんですが、秋本さんがイヤリングを車に落としていたんです。
つぐみがそれを届けに行くと…



不倫相手と落ち合ったところを目撃することに。秋本さんは、『…軽蔑した?』『……小峰だって前の女と切れてないのよ』 とダブル不倫突入報告。
それに対してつぐみは、真っ向から否定はしないけれど、だからって… という反応なんですね。

安易に わかるぜ!的な同意をする必要ないですが、、、状況は違えどキミも不倫に疲れて田舎に移ってきたんじゃ…?とツッコミたくなりますが。こういう時の優等生っぽさや、“女”っぽい感じが、つぐみらしくてなんだか疲れるな。なんていうか、男には甘くて女に手厳しい感じがするんですよね。。。

『……先生に十分愛されている堂園には 分からないわよ。私の不安な気持ちは   

他人の気持ちは分からない… それは当たり前なので、年齢とともにこんなことお互いに言わなくなる。それでもこれを言わせてしまう、相手の癇に障る何かがつぐみにはあるんだろうなぁ。少なくとも、秋本さんにとっては。

…多くの女には どんな不幸な結婚でも「それでもしてるほうがいい」と思う“季節”がある

私はそうだった、と思いながら秋本の未来に思いを馳せるつぐみさんです。

ホモ疑惑が浮上するほど、モテるのに独り身だった海江田教授。
その理由は、ひとえに大学時代の先生・つぐみの祖母への片想いにあるわけなんですが、これまでは部分的に回想シーンが出てくる程度でした。

そこをですね、がっつり描いて下さっているんです。海江田の二十歳の頃。

見て下さい。最高学府で哲学を学ぶ学生という、アカデミックすぎる設定に負けないこの外見!
そんな学生が、わざわざ東京から角島にやってきて先生に求婚。

『……先生 ぼくと結婚してください』



はい。します。とあっさりうっかり答えたくなりますが、つぐみ祖母の回答はもちろんNO。今さらですが、初恋の相手がつぐみの祖母ってすごいですね。祖母ですよ。どう若く計算しても40歳くらい。若き日の海江田さん、パッション溢れてますね!(今でもゴリ押しな性格は変わらないけど。)

先生は既婚者で旦那はなかなか良い人のようなんですが、それを知ってなお海江田はしつこく先生に結婚(というか駆け落ち)を迫ります。

その場に、当時4歳のつぐみが現れます。両親の不仲のゴタゴタで預けられていたんです。

『ばあちゃんもつぐみを …おいていくの?…』



海江田はその少女が孫だとは知らなかったんですが、つぐみが「ばあちゃん」と呼んだことで初めて知ることになる。皮肉なことに、それが先生を諦めるきっかけになります。

先生がこの日珍しく香水をつけていた、というくだりが好きです。その香水は今はつぐみがつけています。世界が終わったと思うほどの失恋は、形を変えて成就したんですね。

結婚式も近いある日、海江田が行方不明になります。
それは実父に会うためで。実父の内縁の女性が、死期が近づいた実父を慮って海江田にコンタクトを取ってきたんです。

病院で面会した時の淡々としたやりとり。『なんぞ言うことあるやろ 言うたらええ』

『…何もありません 帰ります お大事に』




この後、雪の降る町にフラフラと降り立ち、立ち尽くす海江田。
その夜宿からつぐみに電話するんですが、何も言えずに泣き崩れます。その姿がとても痛々しい。。でも、ここで電話をする伴侶がいることが救いですよね。

先生と実父。いつも飄々とした彼の感情が溢れ出す時が、二つの異なるエピソードで描かれていて、幼少期からこれまでの彼の人生に少し触れたような気持ちになりました。

最後は、つぐみの妊娠が発覚。
それを知らない海江田が、冷たいつぐみの態度に他に気持ちが移ったんじゃないかと誤解し(本当はただつわりが辛いだけ)、ヤキモチをやくというごちそうさまな幸せエピソードで終了。
しかも、生まれてきた男の子はなかなかのイケメンに育ちます!

今までの3巻と比べても、とにかく濃い4巻でした!大満足!!ですが、改めて違和感があったことが。

平成になってもうじき25年。超コンサバな言葉のやりとりをする海江田夫婦って…。「おかえりー」が「お戻りなさいませ」ですよ!大正ロマンでも皇室でもメイド喫茶でもなく!30代の女性も50代の男性もここまでコンサバな言葉遣いはしないし、もっと対等な関係が普通。さらに歳の差婚だと男性はもっと分かりやすくゾッコンで、それまでのキャラとか置き去りにしてつくしまくっていたりするわけで。

でもきっと、“普通は”とか言っちゃいけないんでしょう。その、えっ??と思わされる違和感がこの作品の世界観を作っているのは間違いなく、それをつっこむなんて野暮なことはしてはいけませんね!
3巻までは海江田氏が嫌味なおっさんに見えて良さに全く共感できませんでしたが、この巻で随分印象が変わりました。清々しい読了感で、読んで良かったと思える今巻でした。オススメです。

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海江田醇20歳、寝るときは裸。
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この記事へのコメント

- コミックボブ(管理人) - 2012年10月02日 00:42:08

かりんさん、コメント&リクエストありがとうございます!
たいようのいえ、大樹の行動から目が離せないですよね☆
また感想書きますね!

- かりん - 2012年10月01日 01:12:54

いつも楽しく拝見させて頂いています♪

デザート11月号たいようのいえの感想もお待ちしています☆

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