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3月のライオン 8巻


どこへ行っても 自分が一番歳上になってから
いったい もう どれくらいたつだろう


表紙、渋いですね。表紙、渋いですよね。3月のライオン “彷徨の第8巻” です。本屋さんでちゃんと新刊の所に並んでいたのに、認識できなくて探してしまいました。一応、18歳の高校生が主役のマンガですけれども、そんな事を微塵も感じさせないこの画… まいっか、ヤングアニマルだし!w まだ8巻というのもちょっと驚きです!

今巻では、宗谷・桐山の記念対局と柳原・島田の棋匠戦という2つの見どころがあります。

まずは宗谷VS桐山の天才対決から。
島田さんが宗谷名人を「大きな翼の白い鳥」と表現するのですが、そのシラサギっぽさ、よく分かります。真っ白で何の色も無い感じ。存在感の大きさ。静かな羽音。1羽で飛来するところ。そのイメージを人間に落とし込めるところが、羽海野先生ですね。

もちろん、力の差は解りきっている。

  だが「勝つため」以外の心で飛び込んだら 一瞬で首を吹っとばされる

そんな気迫を込めながら、淡々と指していく零。「よく戦っている」と周りに言わしめる程の指し合い。ところが、そこで悪手を指してしまい、

指した7四歩から手を離す時 指の表面を引きはがすような感覚があった
  手を離した瞬間に 敗着だと気が付いた




指の表面を引きはがすような感覚… なにそれ、かっこいいな。凡人には分からない感覚なんだろうな。
その敗着に気が付いてからの、零の切り替えが良いんです。  もし ここからの手を全て最善手のみで指し通せたとしたら この将棋はどこまで行けるのかなぁ…って そこからは、余計なものが消えてどんどん手をつなげていく無我夢中の状態に。そして、敗けた後の感覚さえ、今までに経験した事のないような清々しく楽しい気持ち……。
対局の経験を通して、零目線で語られる宗谷はまるで別の世界の、人間ではない何かのようです。俗っぽさがなさすぎるというか。なんだろう。解脱した僧侶のようなものでしょうか。 帰路、同じ新幹線になる零と宗谷名人。零は台風が直撃し仙台で新幹線が止まるハプニングから、偶然彼の秘密を知る事になります。
新幹線が止まった事にも、周囲のざわつきにも気づかず眠っていた宗谷を起こした零。状況を説明しても、何も届いていないような表情。

すべてのピースが合致した

この人の周りから音が消えて見えたのではなかった この人の中に音が無いのだ


この人の耳には もう 何も届いてはいないのだ



零があれこれ手続きして無事にホテルに宿泊できた2人。そこに会長から零の携帯に電話がかかってきて、宗谷が約10年前から「聴こえる」と「聴こえない」を行き来している事を聞きます。

そうだったのか…。聴こえていなかったんですね。孤高の人である事の一因は、ここにもあったのか。元々の性格も、ちょっと風変わりだというのは会長の話から伝わって来ますが。この宗谷名人の秘密は、明らかになったところで今後の展開に影響はなさそうですが、宗谷という人物の奥行きが増しましたよね。
白い鳥の要素に加えて、年齢不詳の雰囲気、知れば知る程俗物感から遠のいて、神様に近づいていく宗谷名人。どうでもいいけど、私はあの色素の薄さやサラサラの髪が好きです!!

さて、もう1つの対局は、島田VS柳原の棋匠戦です。こちらはもう泥臭く暑苦しいの一言!!

柳原棋匠・66歳。
「現役A級・タイトル通算14期、化け物の1人だよ。ここまで来たら もののけのたぐいだ」とは島田談。宗谷は神の化身のような「大きな翼の白い鳥」で、こっちは「もののけ」w どちらも人間ではないっちゅーことですね。

66歳ともなると背負うものの重さが違ってきます。同年代の仲間はほぼ引退。

どこへ行っても 自分が一番歳上になってから いったい もう どれくらいたつだろう
一緒に戦ってきた 仲間も いつしか 一人消え 二人消え……
後に 残ったものは 年老いた身体と 託された このおびただしい数の たすき だけ……




そして、引退した同年代のカメラマンが言った『俺から仕事をとったら何が残ってんだ?』『まるで 焼け野っ原にいるみてぇだ』という言葉が深く心にのしかかってきます。

島田さんは島田さんで、なんとしてもタイトルを獲って故郷に錦を飾りたいという気迫に満ちています。そんな2人の全身全霊のぶつかり合いが渋いッッ熱いッッ!!それはもう、私のような小娘か何か言えるようなソレではないです。

簡単に勝敗が決まるはずもなく、一進一退の戦局が続いた末、島田さんに流れが大きく傾いた時、柳原棋匠が “敗け” を感じるんです。「自分から将棋をとったら何が残るのか」と思いながら、先に引退していった人達の言葉や思いが頭の中を駆け巡ります。そして。

  駄目だ!!
わからんが これは 俺が絶対に手離しちゃいけねぇもんだ!!
オレが担いで 届けるものだ!!
精一杯頑張った人間が 最後に辿り着く場所が
焼野ヶ原なんかであってたまるものか!!




その後の手がまた、皆を驚かせます。『じじい 若々し過ぎるだろう その手はよ』と島田さんが悪態をつくほどに。この戦いを見つめる解説役の零と二階堂は。

激闘だった 棋士ならば誰もが こんな将棋を指してみたいと 心の底から思わずにいられないような

そして169手の大激闘は幕をおろし、柳原棋匠は「永世棋匠」を獲得。
うおぉぉー島田さんまた敗けた!!!くそっっ なんて敗者が似合うんだww わたくし、島田さんが大好きであります。このキュンとくるくたびれた感じがたまらないです。アウトローなくたびれ感ではなく、実直なくたびれ感がね、心のツボを突いてくるんですよ。このマンガ読んでいて島田さん嫌いなんて方いるんですかね?絶対いないですよね?(←過信)島田さんが勝つのは最後の最後でいい。その時は、地味で泥臭い勝ち方なのに涙でページが見えないぜってくらいの大感動を宜しくお願いしたい。それまでは、ギリギリの敗戦を見せつけて欲しいですw

最後は、川本家登場でシメ。
商店街のお祭りに川本家が出店を出すことになり、零が手伝いに行くんです。その時の様子。



細かいところまでしっかり描かれたこういう画、好きだなぁ。まるで映画のワンシーンのよう。東京の下町の空気が伝わってきます。

8巻はがっつり対局でした。といってもそれを通した人間ドラマが軸のマンガなので、戦いそのものが主題というわけではないですが。零くんの青くさい葛藤も大好物ですが、おっさんの皆さんのソレは読み応えありまくりで、なんだか重たい丼ものを完食したような読後感でした!次の巻までの数ヶ月、お腹空かずに待てそうです。

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「だが 断るっっ」by島田
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この記事へのコメント

まことさんへ - コミックボブ(管理人) - 2013年09月29日 19:21:19

まことさん、こんにちは!

> 3月のライオンは、父上から受け継いでますw

お父様☆☆センスのあるチョイスですね!!

> 宗谷さん、耳が聞こえない人だったんですねー ただ、もの静かな人だと思ってましたσ(^_^;)

私も、というか読者みんなそう思っていましたよねきっと(^_^;)
宗谷さん最新刊でもお見かけしましたが、いつもと同じ佇まいで相変わらず白鷺のようでした。

> この巻ではありませんが、ひなちゃんがいじめから抜け出せてホントに良かったと思いますT^T
> このマンガの中で1番好きなキャラです( *`ω´)

ひなちゃんが好きなんですね!いじめられていたあの頃は、読んでいて胃が痛くなるようでしたね…。
そして、ひなちゃんの内に秘めた強さをひしひしと感じたものです。
そんなひなちゃんを護るれいちゃんが大好きですが、私は多分島田さんが一番好きです(^_^)v

- まこと - 2013年09月15日 18:49:51

書き込み遅くなっちゃいましたσ(^_^;)

3月のライオンは、父上から受け継いでますw

宗谷さん、耳が聞こえない人だったんですねー
ただ、もの静かな人だと思ってましたσ(^_^;)

そして、二階堂くん!退院おめでとー☆
ぷにぷにほっぺ、大好きです!


この巻ではありませんが、ひなちゃんがいじめから抜け出せてホントに良かったと思いますT^T

味方がいない中、よく頑張ったな〜

このマンガの中で1番好きなキャラです( *`ω´)

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