夏のかけら / 完結
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ラストゲームの天野先生の読み切り集、夏のかけらです。四季の感じられるショートストーリーが全部で5話収録されています。どれも一生懸命でかわいくて、じんわり広がる温かさや、しみるような切なさがいっぱいの作品。私は「夏のかけら」の切なさにゴロンゴロンし、「冬のかけら」にキュンとしました。
◆夏のかけら
夏休みの間、入院中の田舎の祖父の元へやってきた美雪。その病院で同い年の男の子・円(まどか)に出会い、物語が始まります。
出会ったきっかけは、美雪が祖父の病室と間違えて円の病室に突入した事。勢いよくダイブしたベッドにいたのが、円。

ダイブした先が若い男子なんてどんなラッキーだ!確率からしてオーバー70のじーさまに激突するのが関の山ではないか。羨ましすぎる。
そしてこの、ノスタルジックな外観の明らかに耐震基準満たしてなさそうな木造建築が既に切ないんですけど。美しい景色×木造建築って反則だ。そして、田舎の病院に入院しているなんて「空気が綺麗」以外の理由はないので、切ない結末が待っている事間違いなしの空気に既にやられそうです。
その後、美雪は円に会いに毎日病院に通うようになります。他愛もない会話をしながら宿題をしたりする日々。明るく生意気な発言をする円ですが、時々見える現世への執着の無さを美雪も感じるようになるんです。
例えば、地面から生えるひまわりを見た事がないという円に『見たい?』と聞くと『ん?別に?』とあっさり答える。見たいものとか欲しいものとかないの?と聞いても、『身軽でいいでしょ』と笑う。

その時に美雪が思いつくんです。そんな事言わせないために、ひまわりを見せてやろうじゃないかと。種を病室の近くに植えて、来年の夏に一緒に見ようと。相手を想うこういう一生懸命な気持ちって、かわいくてロマンチックでたまらないですね。
そんな時、美雪は円が激しく咳き込み吐血するところを見てしまい…、それは美雪に、円に残された時間を感じ取らせました。そして、このまま自分が病院に通い続けていいものかと悩むのですが、祖父の「(入院中)美雪が毎日来てくれたから嬉しかった」という言葉に勇気づけられ、また病院に向かいます。
円が長くは生きられない事は途中から明らかで、それを美雪も円も口には出さないのですが、お互い口に出さないようにしている事にも気づいていて…。分かっていながらの2人の笑顔がさあ~。もう、どんだけ健気なんだって話!!ちょっと風邪ひいたくらいで「生きるのがつらい…」とか言ってる私がこの話の感想など書いている事を心からお詫びしたいですorz
夏休み最後の日=2人の別れの日、宿題を教えてやったお礼をちょうだいと言い、円がいつも三つ編みの美雪の髪を下ろさせるシーン、そして美雪が無理だと分かっているのに「ずっと一緒にいる」と泣いてしまうシーンなんて、そうなるだろう予想しながら読んでいてもどうしようもなく切なくって、心痛による眉間のシワがしばらく消えそうもありません!!(泣)
そんでもって、キスシーンをカーテン越しのシルエットで描くとか切ない描写やーめーてー!!!!切な死ぬから!!!
それが2人が会った最後。そして、円は次の夏を迎えられず、そのまま3年の時が過ぎ……。
祖父の喜寿のお祝いで田舎を訪れ、その時に立ち寄った病院で、美雪は看護師さんに「見せたいものがある」と言われ、外に連れ出されます。案内された場所にあったのは、

咲き誇るたくさんのひまわり。円が言った言葉を看護師さんが教えてくれます。
『「見たいものができた」って「一緒に 見たい人ができたんだ」』
3年前、円に渡そうとして渡せなかったひまわりの種は、円が見つけていたんですね。それが咲くところを本人は見る事が出来なかったけれど、こうして「一緒にみたい人」だった美雪が目にする事ができた。切ないけど爽やかな結末。
一緒に見たい人ができた…ってさあああああ!!!感動的すぎる。そんなメッセージ受け取ったら、その先のどんな恋も霞んでしまいそうだ。辛いけど幸せな、こういう一生ものの感情を抱えて生きていくのだね、美雪は。
ハッピーエンドが大好きだけど、こういう切なさと幸せの入り混じる結末が、実は自分にとって黄金パターンだと最近気づきました。すり傷的な心痛が一番痛くて心から消えない…。このお話は、そういう展開がお好きな方にオススメしたいです!
あーでもやっぱり超絶ハッピーエンドが読みたいな!w
◆冬のかけら
主人公は読書が趣味の図書委員・菊池さん。その菊池さんが目撃する、図書室で繰り広げられる恋物語。
ある日、同じクラスの遠野が図書室で編みかけのマフラーにキスするところを目撃した菊池さん。

そして、遠野にキレられるw
マフラーの持ち主は紺野さん。遠野は紺野さんに片想い中なんですね。それから彼は、毎日図書室に現れるようになります。
遠野はリーダー格の男子でいつも周りに人がいる人気者。でも口が悪いので女子はそんな彼を遠巻きにみているだけw 紺野さんに対する態度も、本当に好きなの?と菊池さんが思うほどなんですが、思い荷物を運んでコケる彼女を見て、憎まれ口を叩きながらも手を貸したりする。

その様子は菊池さんがちょっと赤面しちゃうほど、優しい男子のカオで。なんだよもう、このツンデレ!キュンキュンしちゃうじゃん!その後も、図書館での2人のやりとりを見ている菊池さんは、ハタ目には、仲が良くて「いい感じ」の2人に見えるのに、と思いはじめます。でもそれが、そーじゃないんです。。。
ある日、菊池さんは紺野さんが図書室で他の男子と一緒にいるところを目撃するのですが、それは明らかに紺野さんがその人に片想いしているんだと分かる雰囲気で…。さらにそれを遠野は
『…知ってる』
と。バラしたら許さねーぞ、と言ったのは、自分のためではなく紺野さんのためだったんだと気づく菊池さん。遠野は切ない片想い男子だったんですねー。しかもめっちゃ男気のあるいいヤツじゃないですか!こりゃもう菊池さんはの恋落ちは確定の方向です。
そもそも。図書室シチュに萌え萌えだよ。中高ではほとんど行かなかったなあ。大量の本の間では、こんな静かで切なくて苦い恋があったりしちゃったわけなのねー。クールなメガネ男子もいいいけど、学校の喧騒から隔絶された空間の中に、明らかに不釣り合いなヤンキー風味の男子を見かけちゃったりしたらその意外さに容赦なく恋落ちだよな、とかウキウキ妄想してみますが、その前に女子校だったことが既にアウトな私の人生です。
さて、作りかけのマフラーが完成したら告白する!と決めている紺野さんですが、ちょっとした出来事で自信を失くしてしまい、図書室で「告白するだけ無駄かも」と落ち込みます。
「せめてもっと器用だったりかわいかったりしたら」と言う彼女を見た菊池さんは、これは遠野にチャンス到来なんじゃないの?と思うんです。そして、遠野は。
『可愛いよ お前は誰より可愛い』
驚く菊池さんと紺野さん。遠野が続けます。『マフラーだって最高の出来だ 手先だって超器用 おマエサイコー 心配無用 って言われれば満足するのか?』遠野なりの、遠回しの励まし。うぎゃーかっこいいし!!この人片想いを全うする気だ!!いや、知ってたけど!!そして、遠野にチャンスなんじゃない?と思った菊池さんが友達甲斐あり過ぎて素敵☆☆
遠野の言葉で元気になった紺野さんは、あげる!と言って練習用に編んだマフラーを遠野の首にかけて立ち去ります。
一連のやりとりを終始見ていた菊池さんは号泣w ホント友達甲斐のある人だ。そして、『…なぐさめてよ 菊池』と言われた菊池さんは思わず。

これに対する「2号さんとかどう?」という遠野らしい軽口からの、後日。『ねー遠野 いーよ 2号さん』という菊池さんからの告白。こんな一部始終を見て遠野を好きにならないという選択肢はない。いーよ2号さん、に激しく同感。ツンデレ男子の遠野となにげに健気な菊池さんを大変好きになったので、読後感がとても良かったです。
◆恋のかけら
こちらは、前出の紺野さんが主人公で彼女の目線から見た恋の物語。冬のかけらのオムニバス的なお話ですね。
冬のかけらで分かった事は、紺野さんはかわいくて天然で素直ないい子だという事。だが。私はどうも紺野さんが好きになれない。この女子度MAXなキャラに思わず「スイーツうざい。」と思ってしまうのをどうしても止められないw 遠くから愛でる分にはいいけど、絶対に友達にはなれない類の方です。
そんなわけであまり感情移入できずに読みましたが、ストーリーはドストレートな恋物語で楽しめます。

2年になって家庭科部に入部した紺野さん。理由は、近藤部長が手芸コンクールで入賞した作品を見て感動したから。ちなみに、近藤部長というのは学校一無愛想な男子生徒です。
入部したものの、紺野さんは編み棒で手を刺して流血したり、力を入れ過ぎて折ってしまったり、編む以前に越えねばならない沢山のハードルがあるくらい、不器用。
謝る紺野さんに部長は。
『何故謝る? これから上達すればいいだけだろう そのために入部したんだろう?』
と声をかける。この言葉により、恋に落ちた紺野さん。
ところが、部長は鈍い上に感情の振れ幅が小さいので、他人の機微がわからない男なんですよ。紺野さんの一挙手一投足からは部長への気持ちがダダ漏れなのに、全く気づかない。部長のキャラ、嫌いじゃないw
部長の友達の岡田先輩は紺野さんの気持ちに気づいていて、色々とフォローしてくれるんです。部長のためにマフラーを編もうとする紺野さんに、部長の好きな色を教えてくれたり。岡田先輩のキャラも、いいw 私が紺野さんなら岡田先輩を選ぶかもしれない。
春から編み始めたマフラーは、冬になる頃ようやく完成し、紺野さんは完成の喜びを岡田先輩と分かち合い、明日渡す=告白する!と盛り上がっているところに、偶然近藤部長が登場。そして、マフラーを見て、編み方にダメ出し。
渡す予定の相手にダメ出しをされるという不幸な出来事に、泣きながら走り去る紺野さん。

近藤部長は呆然。
翌日も廊下で部長を避け、放課後も家庭科室に姿を見せない紺野さん。部長は家庭科室で紺野さんを待つうちにウトウトしてしまうのですが、そこに紺野さんが現れて。
『 部長 好きです』

突然の告白にやはり呆然の部長w
最後は、紺野さんの想いが部長に響いて、これまで無自覚だった気持ちを自覚する…というハッピーエンド♪ 鈍い人が鈍いなりに気持ちを自覚する瞬間が、もーじれったくて大好きです!そして周囲のまともな人々、今回だと岡田先輩のつっこみとか気苦労がよい。部長の鈍さとセットで大好物☆
◆春待ち草子
主人公・日向の父は童話作家。3年前に他界した父に対するある後悔を、父の遺した作品と共に日向が乗り越えていく物語です。父娘の切なく温かい思いにファンタジー要素も重なり、なんて優しい物語なのかと!
はじまりは父の3回忌。
日向は母親から「父の書斎にあるものを見てごらん」と言われ、ある封筒を手にします。それは童話の原稿。日向はいつも仕事ばかりだった父親を思い出し、苛立ちからその原稿をロクに見もせず窓の外に捨ててしまいます。
そのままうたた寝をした日向が目を覚ますと、そこにいたのは、父の書いた童話の主人公達!

書き手の愛情をたっぷり受けた本は魂を持つ…ということで、本の中のキャラ達も父の3回忌のために集まっていました。でもそこに、あと一人足りないと言います。それは、さっき日向が窓から投げ捨てた原稿の主人公で…。
日向は本の主人公達とその原稿を探しにいく事になり、その過程で、父との思い出を見つめ直して行く事になります。日向の後悔とは、父の死ぬ3日前に言ってしまったある言葉。
『父さんも父さんの本も大っキライ!』

父さんに嫌われていたんじゃないか、自分よりも本の方が大切なんじゃないか、と思っている日向。そんな日向にざしきわらしが言うんです。『ハルの紡ぐ物語は 全てお前のための物語はなんだよ』。はじめての本が出た時の事、その本を幼い日向に読んで聞かせたら、それを好きだと言ったんです。

それ以来、父・ハルの書く物語は全て日向のためのもの。それを聞いた日向は、どうして自分の気持ちをちゃんと言えなかったのか、と再び後悔してしまうのですが。またざしきわらしが言います。
『…なあ日向 全ての人間が全てを口にできていたら 生まれなかったかもしれないよ 恋文も手紙も それから童話(俺達)も』
だから、伝えられなかった思いにも後悔にも、きっと何か意味があるはずだと。この言葉が日向を後悔から救い出してくれました。
なんでしょう、この言葉。不意に泣きたくなるような感情がこみ上げてきました。多分これは深い深い共感だ。
さて、探していた原稿が見つかり、最後に出てきた主人公はなんと日向本人!遺作は「主人公の女の子が大好きな本の主人公達と一緒に自分を探しに行くお話」でした。こういうオチかあ。いいエンディングだわ~☆
不器用だけど日向への愛情いっぱいだった父親が素敵で、でもそんな夫を愛していた(というか楽しんでいた?)大雑把で動じない母親が実は一番素敵でした☆
◆秋色 君色
主人公・かのこが電車で一目惚れした男の子の、ストーカーになるお話w 名前も知らない彼にガンガン突撃して行く姿は危ういほどに清々しく痛快です!
一目惚れした相手をたまたま知っていた友達から、伊原という名前と、女にとんでもなく冷たい人だという事を聞きます。そんな事は意に介さず、翌日電車で本人に突撃するかのこ。『昨日助けて貰って恋におちました!よかったら友達から』って、なんだこの肉食w
さらに、『1か月 あたしを知ってみない? その上でダメならふってよ!ね!』とだめ押し。その結果…。
『あんたみたいなタイプが一番嫌い』

ぎゃあ!こんな振られ方って!!人生のトラウマ級の一言を頂いたにも関わらず、彼の暗い瞳には何かワケがあるのでは…?と妄想して、翌日もまた電車で彼を待つかのこ。そして今度は『心底うざい』というお言葉を。。。
それなのに、毎日毎日電車で話しかけようとするかのこ。素晴らしいメンタルタフネスだ!!将来はアポなしの飛び込み営業とか最高に向いてると思う。
そしてついに、伊原くんが根負けするんです!といっても、はじめは「無視されなくなった」程度の前進。でも、ひなたのまっすぐな気持ちが次第に彼の気持ちに変化を与えていき、ついに『あんたに会えてよかったよ』とまで言わしめる。根性でもぎとった勝利☆
ところが、ある日を境に伊原くんは電車に乗ってこなくなり、かのこは噂で彼が重い病気で、手術のために東京に引っ越した事を知ります。
そして1年後。
彼がいなくなった時と同じ、イチョウが色づく季節。伊原くんを思い出し、しんみりしながら木陰に座るかのこの頭に載せられる花冠。
『…花冠 欲しかったんだろ あいにくバラじゃないけどさ』

最後の最後にロマンスきたーーーーー!!!!伊原くんカムバック!しかも、前にかのこが熱く語った憧れの少女漫画のワンシーンを再現してくれるとはニクいじゃねえか!何時の間にか寄り切られていた伊原くんに若干ニヤニヤしちゃいますが。『最後に愛は勝つ』んですねー♪(←昭和)
最後のおまけまんがで岡田くんが報われる予感が!?
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例えば、地面から生えるひまわりを見た事がないという円に『見たい?』と聞くと『ん?別に?』とあっさり答える。見たいものとか欲しいものとかないの?と聞いても、『身軽でいいでしょ』と笑う。

その時に美雪が思いつくんです。そんな事言わせないために、ひまわりを見せてやろうじゃないかと。種を病室の近くに植えて、来年の夏に一緒に見ようと。相手を想うこういう一生懸命な気持ちって、かわいくてロマンチックでたまらないですね。
そんな時、美雪は円が激しく咳き込み吐血するところを見てしまい…、それは美雪に、円に残された時間を感じ取らせました。そして、このまま自分が病院に通い続けていいものかと悩むのですが、祖父の「(入院中)美雪が毎日来てくれたから嬉しかった」という言葉に勇気づけられ、また病院に向かいます。
円が長くは生きられない事は途中から明らかで、それを美雪も円も口には出さないのですが、お互い口に出さないようにしている事にも気づいていて…。分かっていながらの2人の笑顔がさあ~。もう、どんだけ健気なんだって話!!ちょっと風邪ひいたくらいで「生きるのがつらい…」とか言ってる私がこの話の感想など書いている事を心からお詫びしたいですorz
夏休み最後の日=2人の別れの日、宿題を教えてやったお礼をちょうだいと言い、円がいつも三つ編みの美雪の髪を下ろさせるシーン、そして美雪が無理だと分かっているのに「ずっと一緒にいる」と泣いてしまうシーンなんて、そうなるだろう予想しながら読んでいてもどうしようもなく切なくって、心痛による眉間のシワがしばらく消えそうもありません!!(泣)
そんでもって、キスシーンをカーテン越しのシルエットで描くとか切ない描写やーめーてー!!!!切な死ぬから!!!
それが2人が会った最後。そして、円は次の夏を迎えられず、そのまま3年の時が過ぎ……。
祖父の喜寿のお祝いで田舎を訪れ、その時に立ち寄った病院で、美雪は看護師さんに「見せたいものがある」と言われ、外に連れ出されます。案内された場所にあったのは、

咲き誇るたくさんのひまわり。円が言った言葉を看護師さんが教えてくれます。
『「見たいものができた」って「一緒に 見たい人ができたんだ」』
3年前、円に渡そうとして渡せなかったひまわりの種は、円が見つけていたんですね。それが咲くところを本人は見る事が出来なかったけれど、こうして「一緒にみたい人」だった美雪が目にする事ができた。切ないけど爽やかな結末。
一緒に見たい人ができた…ってさあああああ!!!感動的すぎる。そんなメッセージ受け取ったら、その先のどんな恋も霞んでしまいそうだ。辛いけど幸せな、こういう一生ものの感情を抱えて生きていくのだね、美雪は。
ハッピーエンドが大好きだけど、こういう切なさと幸せの入り混じる結末が、実は自分にとって黄金パターンだと最近気づきました。すり傷的な心痛が一番痛くて心から消えない…。このお話は、そういう展開がお好きな方にオススメしたいです!
あーでもやっぱり超絶ハッピーエンドが読みたいな!w
◆冬のかけら
主人公は読書が趣味の図書委員・菊池さん。その菊池さんが目撃する、図書室で繰り広げられる恋物語。
ある日、同じクラスの遠野が図書室で編みかけのマフラーにキスするところを目撃した菊池さん。

そして、遠野にキレられるw
マフラーの持ち主は紺野さん。遠野は紺野さんに片想い中なんですね。それから彼は、毎日図書室に現れるようになります。
遠野はリーダー格の男子でいつも周りに人がいる人気者。でも口が悪いので女子はそんな彼を遠巻きにみているだけw 紺野さんに対する態度も、本当に好きなの?と菊池さんが思うほどなんですが、思い荷物を運んでコケる彼女を見て、憎まれ口を叩きながらも手を貸したりする。

その様子は菊池さんがちょっと赤面しちゃうほど、優しい男子のカオで。なんだよもう、このツンデレ!キュンキュンしちゃうじゃん!その後も、図書館での2人のやりとりを見ている菊池さんは、ハタ目には、仲が良くて「いい感じ」の2人に見えるのに、と思いはじめます。でもそれが、そーじゃないんです。。。
ある日、菊池さんは紺野さんが図書室で他の男子と一緒にいるところを目撃するのですが、それは明らかに紺野さんがその人に片想いしているんだと分かる雰囲気で…。さらにそれを遠野は
『…知ってる』
と。バラしたら許さねーぞ、と言ったのは、自分のためではなく紺野さんのためだったんだと気づく菊池さん。遠野は切ない片想い男子だったんですねー。しかもめっちゃ男気のあるいいヤツじゃないですか!こりゃもう菊池さんはの恋落ちは確定の方向です。
そもそも。図書室シチュに萌え萌えだよ。中高ではほとんど行かなかったなあ。大量の本の間では、こんな静かで切なくて苦い恋があったりしちゃったわけなのねー。クールなメガネ男子もいいいけど、学校の喧騒から隔絶された空間の中に、明らかに不釣り合いなヤンキー風味の男子を見かけちゃったりしたらその意外さに容赦なく恋落ちだよな、とかウキウキ妄想してみますが、その前に女子校だったことが既にアウトな私の人生です。
さて、作りかけのマフラーが完成したら告白する!と決めている紺野さんですが、ちょっとした出来事で自信を失くしてしまい、図書室で「告白するだけ無駄かも」と落ち込みます。
「せめてもっと器用だったりかわいかったりしたら」と言う彼女を見た菊池さんは、これは遠野にチャンス到来なんじゃないの?と思うんです。そして、遠野は。
『可愛いよ お前は誰より可愛い』
驚く菊池さんと紺野さん。遠野が続けます。『マフラーだって最高の出来だ 手先だって超器用 おマエサイコー 心配無用
遠野の言葉で元気になった紺野さんは、あげる!と言って練習用に編んだマフラーを遠野の首にかけて立ち去ります。
一連のやりとりを終始見ていた菊池さんは号泣w ホント友達甲斐のある人だ。そして、『…なぐさめてよ 菊池』と言われた菊池さんは思わず。

これに対する「2号さんとかどう?」という遠野らしい軽口からの、後日。『ねー遠野 いーよ 2号さん』という菊池さんからの告白。こんな一部始終を見て遠野を好きにならないという選択肢はない。いーよ2号さん、に激しく同感。ツンデレ男子の遠野となにげに健気な菊池さんを大変好きになったので、読後感がとても良かったです。
◆恋のかけら
こちらは、前出の紺野さんが主人公で彼女の目線から見た恋の物語。冬のかけらのオムニバス的なお話ですね。
冬のかけらで分かった事は、紺野さんはかわいくて天然で素直ないい子だという事。だが。私はどうも紺野さんが好きになれない。この女子度MAXなキャラに思わず「スイーツうざい。」と思ってしまうのをどうしても止められないw 遠くから愛でる分にはいいけど、絶対に友達にはなれない類の方です。
そんなわけであまり感情移入できずに読みましたが、ストーリーはドストレートな恋物語で楽しめます。

2年になって家庭科部に入部した紺野さん。理由は、近藤部長が手芸コンクールで入賞した作品を見て感動したから。ちなみに、近藤部長というのは学校一無愛想な男子生徒です。
入部したものの、紺野さんは編み棒で手を刺して流血したり、力を入れ過ぎて折ってしまったり、編む以前に越えねばならない沢山のハードルがあるくらい、不器用。
謝る紺野さんに部長は。
『何故謝る? これから上達すればいいだけだろう そのために入部したんだろう?』
と声をかける。この言葉により、恋に落ちた紺野さん。
ところが、部長は鈍い上に感情の振れ幅が小さいので、他人の機微がわからない男なんですよ。紺野さんの一挙手一投足からは部長への気持ちがダダ漏れなのに、全く気づかない。部長のキャラ、嫌いじゃないw
部長の友達の岡田先輩は紺野さんの気持ちに気づいていて、色々とフォローしてくれるんです。部長のためにマフラーを編もうとする紺野さんに、部長の好きな色を教えてくれたり。岡田先輩のキャラも、いいw 私が紺野さんなら岡田先輩を選ぶかもしれない。
春から編み始めたマフラーは、冬になる頃ようやく完成し、紺野さんは完成の喜びを岡田先輩と分かち合い、明日渡す=告白する!と盛り上がっているところに、偶然近藤部長が登場。そして、マフラーを見て、編み方にダメ出し。
渡す予定の相手にダメ出しをされるという不幸な出来事に、泣きながら走り去る紺野さん。

近藤部長は呆然。
翌日も廊下で部長を避け、放課後も家庭科室に姿を見せない紺野さん。部長は家庭科室で紺野さんを待つうちにウトウトしてしまうのですが、そこに紺野さんが現れて。
『

突然の告白にやはり呆然の部長w
最後は、紺野さんの想いが部長に響いて、これまで無自覚だった気持ちを自覚する…というハッピーエンド♪ 鈍い人が鈍いなりに気持ちを自覚する瞬間が、もーじれったくて大好きです!そして周囲のまともな人々、今回だと岡田先輩のつっこみとか気苦労がよい。部長の鈍さとセットで大好物☆
◆春待ち草子
主人公・日向の父は童話作家。3年前に他界した父に対するある後悔を、父の遺した作品と共に日向が乗り越えていく物語です。父娘の切なく温かい思いにファンタジー要素も重なり、なんて優しい物語なのかと!
はじまりは父の3回忌。
日向は母親から「父の書斎にあるものを見てごらん」と言われ、ある封筒を手にします。それは童話の原稿。日向はいつも仕事ばかりだった父親を思い出し、苛立ちからその原稿をロクに見もせず窓の外に捨ててしまいます。
そのままうたた寝をした日向が目を覚ますと、そこにいたのは、父の書いた童話の主人公達!

書き手の愛情をたっぷり受けた本は魂を持つ…ということで、本の中のキャラ達も父の3回忌のために集まっていました。でもそこに、あと一人足りないと言います。それは、さっき日向が窓から投げ捨てた原稿の主人公で…。
日向は本の主人公達とその原稿を探しにいく事になり、その過程で、父との思い出を見つめ直して行く事になります。日向の後悔とは、父の死ぬ3日前に言ってしまったある言葉。
『父さんも父さんの本も大っキライ!』

父さんに嫌われていたんじゃないか、自分よりも本の方が大切なんじゃないか、と思っている日向。そんな日向にざしきわらしが言うんです。『ハルの紡ぐ物語は 全てお前のための物語はなんだよ』。はじめての本が出た時の事、その本を幼い日向に読んで聞かせたら、それを好きだと言ったんです。

それ以来、父・ハルの書く物語は全て日向のためのもの。それを聞いた日向は、どうして自分の気持ちをちゃんと言えなかったのか、と再び後悔してしまうのですが。またざしきわらしが言います。
『…なあ日向 全ての人間が全てを口にできていたら 生まれなかったかもしれないよ 恋文も手紙も それから童話(俺達)も』
だから、伝えられなかった思いにも後悔にも、きっと何か意味があるはずだと。この言葉が日向を後悔から救い出してくれました。
なんでしょう、この言葉。不意に泣きたくなるような感情がこみ上げてきました。多分これは深い深い共感だ。
さて、探していた原稿が見つかり、最後に出てきた主人公はなんと日向本人!遺作は「主人公の女の子が大好きな本の主人公達と一緒に自分を探しに行くお話」でした。こういうオチかあ。いいエンディングだわ~☆
不器用だけど日向への愛情いっぱいだった父親が素敵で、でもそんな夫を愛していた(というか楽しんでいた?)大雑把で動じない母親が実は一番素敵でした☆
◆秋色 君色
主人公・かのこが電車で一目惚れした男の子の、ストーカーになるお話w 名前も知らない彼にガンガン突撃して行く姿は危ういほどに清々しく痛快です!
一目惚れした相手をたまたま知っていた友達から、伊原という名前と、女にとんでもなく冷たい人だという事を聞きます。そんな事は意に介さず、翌日電車で本人に突撃するかのこ。『昨日助けて貰って恋におちました!よかったら友達から』って、なんだこの肉食w
さらに、『1か月 あたしを知ってみない? その上でダメならふってよ!ね!』とだめ押し。その結果…。
『あんたみたいなタイプが一番嫌い』

ぎゃあ!こんな振られ方って!!人生のトラウマ級の一言を頂いたにも関わらず、彼の暗い瞳には何かワケがあるのでは…?と妄想して、翌日もまた電車で彼を待つかのこ。そして今度は『心底うざい』というお言葉を。。。
それなのに、毎日毎日電車で話しかけようとするかのこ。素晴らしいメンタルタフネスだ!!将来はアポなしの飛び込み営業とか最高に向いてると思う。
そしてついに、伊原くんが根負けするんです!といっても、はじめは「無視されなくなった」程度の前進。でも、ひなたのまっすぐな気持ちが次第に彼の気持ちに変化を与えていき、ついに『あんたに会えてよかったよ』とまで言わしめる。根性でもぎとった勝利☆
ところが、ある日を境に伊原くんは電車に乗ってこなくなり、かのこは噂で彼が重い病気で、手術のために東京に引っ越した事を知ります。
そして1年後。
彼がいなくなった時と同じ、イチョウが色づく季節。伊原くんを思い出し、しんみりしながら木陰に座るかのこの頭に載せられる花冠。
『…花冠 欲しかったんだろ あいにくバラじゃないけどさ』

最後の最後にロマンスきたーーーーー!!!!伊原くんカムバック!しかも、前にかのこが熱く語った憧れの少女漫画のワンシーンを再現してくれるとはニクいじゃねえか!何時の間にか寄り切られていた伊原くんに若干ニヤニヤしちゃいますが。『最後に愛は勝つ』んですねー♪(←昭和)
最後のおまけまんがで岡田くんが報われる予感が!?
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Entry ⇒ 2013.02.03 | Category ⇒ 夏のかけら / 完結 | Comments (0) | Trackbacks (0)