 | - あだち 充
- 発売日 : 2013/03/12
- 出版社/メーカー : 小学館
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投馬には 敵わねえよ1巻でアウトラインが描かれ、いよいよ物語が進み始めるMIX2巻です。今巻でも、相変わらずの二階堂物語が繰り広げられるとものと思われます。
二階堂親子に牛耳られた明青学園で、飼い殺し状態の立花兄弟。このままでいいの?と思う気持ちは皆同じで。
『あの二人こそいいのか?明青にいて』と音美に聞く夏野。
そして高校の野球関係者も立花兄弟に注目。
『今までにもいくつか話があったらしいぞ。立花兄弟を欲しがってる高校から それも バッテリーとしてな』
そんな話は誰かが途中で握りつぶしているようです。中学で社会の縮図を学ぶとは、世知辛いなあ。。。
さて、ついに全国大会予選が始まります。全国に出るためにはまずブロック大会で優勝し、さらに都大会で勝ち進まなければなりません。エース・二階堂のまま、どこまでいけるのか…。
ところがこのボンボン、ちょっと意外なほど勝利への執着を見せるんです。そして、運も味方につけてなんとかブロック代表決定戦に進出という展開。
二階堂の勝利へのこだわりについて。
『ほとんど首振った事がねえんだよ、おれのサインに』と言う走一郎。投馬は、負けた時に走一郎のせいにするためだと言うのですが、半分正解半分不正解なのかなという感じです。プライドだけは一人前なのが二世ですから、負ける自分は許せないんじゃないかな。そして、案外冷静に自分の実力を知っているのでしょう。走一郎に託す事で勝ちに近づける事を、二階堂は知っているのだと思います。
そして、決勝戦はまさかの完封勝利。
明青学園は、20年ぶりの都大会出場を決めます。


ざまあみろって言っちゃうこの人格の小ささすごい!!調子のりまくりなところがむしろ憎めないww そして調子に乗った結果が、後日部員全員に記念写真入り図書カードのプレゼント。このはしゃぎっぷりたるやww
こういう人達は、自分に向けられる「わーすごーい」(棒読み をどう捉えるのでしょうね。自信満々に見せながら実は誰よりも他人の目を気にする隠れ小心者タイプと、その棒読み感に全く気がついていないオメデタイタイプの二極かと思いますが、二階堂親子は息子が前者で父親が後者のような気がしていますがどうでしょうか。
ブロック戦が終わると今度はテスト。
投馬は会話の流れでクラスメイトと賭けをする事になります。投馬が負けたら、その友達と音美のデートを取り持つという賭け。
それからというもの、珍しく勉強に打ち込む投馬。皆が寝静まった後も、文句言いながらひとり勉強。そして結果はなんと、クラス5位。
『うちの背番号1の集中力・執念も相当なもんだが… 投馬には敵わねえよ』と走一郎を唸らせます。
こういう、投馬の態度と裏腹な愛情はタッちゃんを彷彿とさせますね。あだち作品のヒーローは総じてこんな感じで、そこがらたまらなく好きだ。ちなみに、クラス1位は走一郎。彼はカッちゃんであり新田くんでもある。なにそのいいとこ取り。おいしい。おかわり。
さて、期末テストが終わり、もうじき都大会。1回戦をひかえ、キャプテン・今川から渡されたDVDで対戦校分析をする走一郎。相手のピッチャーは「1級品」とは走一郎評ですが、なんとそのピッチャーの名前は、西村!!!に し む ら!!!ここで西村Jr.きたかっっ!!!その顔はまるで父親と双子ww 決め球のカーブがすごいのは、父親直伝でしょうか。
そして迎えた試合当日、事件(?)発生。

何故か姿を現さない二階堂。相手方もエース温存で、控え同士の投げ合いになります。二階堂がいなければいないで、試合はいい感じのシーソーゲームに。
『久しぶりに試合が楽しくなってきたぜ』
『誰かがさんがいないおかげでな』
決して楽な試合ではないのに、健全な戦いに走一郎も投馬も試合を楽しむ気持ちを取り戻していきます。ピッチャー・安野も慣れない大舞台でよく頑張り、なによりも走一郎のリードが相手に大量得点を許さない。
そんな中、塁に出た投馬が観客席を見ている。走一郎がその視線の先を見ると、そこには二階堂父の姿が。そしてベンチには二階堂。。。
『いつ?』と今川に聞く走一郎。
『たった今だよ』
『まさか?』
『代えるさ、エースだぜ明青の 』
この短いやりとりから、走一郎の苛立ちがビンビンに伝わってきます。
打席に立つ走一郎が打った球はファーストライナー。飛び出したランナー・投馬はもどれず、ダブルプレー。苛立ちを隠さず、バットを叩きつけるその姿は、「めずらしいわね、いつもクールな走様が」と言われるほど。走一郎が感情を露わにしたのはこのシーンだけです。
攻守交代の場面、ピッチャー・安野に代わって二階堂が登場。
打席には、4番・西村。エースで4番とは熱い。西村の打球は高く打ち上がり、そのままフェンスを直撃。あっという間に同点。
そのまま追加点はなく、5ー5で5回を終えるものの、迎えた6回表・青明の攻撃は、三者凡退。
6回裏・マウンドに向かう時、意味深に監督を見やる二階堂。マウンドに上がると今度は観客席を見て、球場をぐるりと見渡します。投球練習も始めずに、最後に投馬をチラリと見て不敵に笑う二階堂。

場面はここで、投馬父へと切り替わります。
この場面展開は、父の代の恨みを今晴らしているというメッセージ…?そして、二階堂のターゲットは走一郎ではなく投馬のようです。ということは、真のターゲットは投馬の父ということでしょうか。恨みをかいそうなタイプには見えませんが…。野球上手くなかったみたいですし…。
6回裏・水神の攻撃は5得点。そして最終回の攻撃が始まった時、すでにベンチに背番号1の姿はなかった…。
分かっていたよ。そんなヤツだって。はよ死ねや!
西村の力投により、終わってみれば5ー10。
『はい、おしまいおしまい。』
あだち先生の生み出す中学生は、悟ってるなあ。もっかい言っておく。二階堂、はよ死ねや!
二階堂は、正々堂々と勝負したら水神に負けるから、負けを自分のせいにしないために来なかったのでしょうか。でもチームが勝ちかけたから出てきて、そしてやっぱり負けたのかな?それとも、わざと負けるために出てきた…?こうなってみると、あの勝利への執念も、こうやって都大会で負けて投馬を悔しがらせる事が目的だったのか?と思えます。「ざまあみろ」と言いたいのでしょう。自分にいいところを持っていかれて、ざまあみろ。さらに、都大会まで進みながら惜敗して、ざまあみろ。違った種類の復讐を織り交ぜているのだとしたら、なかなか凝った復讐劇です。
はー。これで一区切りか。
今後気になるポイントは、二階堂引退後の監督の采配と、走一郎と投馬の進路です。このまま進学したら中学の二の舞ですが、それでも絶対明青に進むんだろうなー。2人揃って別の高校に進んだら、このマンガの意味が大きく失われる気が…。あ、片方だけ出る…という選択もあるのか?
なんとなく、あだち作品はそこんとこはガチだと思うので、2人とも、あえての明青、という選択するんだろうなと思います。その前に、まずは新チームの体制が気になります。
早く投馬の投球シーンが見たいお。
中1とは思えぬ入浴シーンである
 | - あだち 充
- 発売日 : 2012/10/12
- 出版社/メーカー : 小学館
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舞台は明青学園
上杉兄弟の伝説から26年、今、再び運命の兄弟が明青学園の扉を開く。
そして物語は始まる (裏表紙解説)昔、昔のその昔、一度だけな。タッチの舞台だった明青学園野球部のその後を描くmix(ミックス)1巻です。
“上杉兄弟の伝説から26年” のコピーの通り、なんと上杉達也が甲子園で熱投し優勝した1986年から、もう26年!!ちょっと引くほど年月が経ちましたね。
読み進めると、ひとコマひとコマが正しくあだち作品で嬉しい。同性に好かれそうな主人公とか、一つ屋根の下のかわいい妹とか、登場人物の若年寄り感とかw、会話の間とか、内輪ネタオチとか、「入浴中」とか、とかとかとか。独特の空気をしっかりまとっていて、全てが信頼のあだちクオリティ☆
ていうかもう、MEISEIと胸に書かれたユニホームを見るだけでノスタル泣きが止まらなくって細かい事などどうでもよい!!!タッチと共通の世界観の中で、設定は似てるけど違う三人が野球したり恋したりするのかと思うだけで、もーどこまでもニヤけられる!!
1巻の内容は人物と設定紹介でした。物語が始まるのは2巻からかな。
主人公は、明青学園のすぐ隣の家に住む3人の兄妹。
同じ歳で誕生日も同じ立花走一郎・投馬と、ひとつ下の音美。

連れ子同士の再婚で兄弟になったため、走一郎&音美が実兄弟で、投馬は義理の兄弟です。
音美曰く、投馬は「ものすごいピッチャー」で、走一郎はその投馬が認めるキャッチャー。そのバッテリーが明青学園中学の野球部を経て高校に進み、甲子園を目指す!のかと思いきや…。
エースは3年の二階堂。

ゴツイ顔立ちに似合わず、社長子息のお坊っちゃまです。彼の父親が野球部に多額の寄付をしていたり、監督と親友だったり、、大人の事情のお陰様でエースをはっている二階堂くん。だから毎日
『監督、じゃ お先に。』が許されるという…。監督は二階堂に対してオールOKだし、二階堂の会社に父親が勤めている部員なんて完全にパシリ。
そんなわけで、こんな球を投げる投馬はサード。

ミットに投げ込まれた球の重さが伝わってくるこの感じ!躍動感を強調する画じゃないのに、振り切った腕の速度や、球の緩急を分からしめるところがすごい!あだち先生が描く投馬の本気の投球を想像するだけで、キャインキャインしたくなる~!!そして、特に右投げに萌えるのは完全に個人的な趣味です。
二階堂はさしずめ、タッチの柏葉監督代行の役回りというところでしょうか。権力による抑圧。この作品には、自由で可能性に満ちたキラキラ輝く青春時代☆というおめでたい空気はなく、そこには多くの社会人と変わらぬ理不尽な出来事と気苦労があり、それを入社10年目・中間管理職まっただ中の社員のように、時に流し、時に割り切りながら、現実をしぶとく生きていく登場人物たちの姿があります。
世の中間違っている!と唾とばして熱血するような人はあだち作品には出てきません。みんな若年寄w とりあえず、二階堂父が悪い事して逮捕されたり会社が倒産したりしない限り、二階堂の天下は続くのだろう。
こんな環境に対して、投馬と走一郎には、このまま高等部に進学してもいいものか?という葛藤があるのですが、そこにこんな発言が投げ込まれます。
『早く見たいなマウンドの投ちゃん。明青の背番号1。』
これって、やっぱあれですよね。「南を甲子園に連れてって」と同じで、お願いに見せかけた絶対の命令みたいなものですよね。そうすると、投馬が(=走一郎も)他の高校に行くという選択肢はなくなりますね。なにがなんでも明青の1番を目指すしかない展開です。
この環境は、権力にこびる実力のないメンバーには好都合でもあり、孝太郎…じゃなくてキャプテンの今川も本音では呆れている。そいつらが重用される事があれば、
『そこまで腐ったら見切りをつけろ。』
とキッパリ。
まずは、二階堂引退後の秋からのチーム編成がどうなるのか。2人はこのまま高等部に進学するのか。そして、今回は走一郎と音美の恋愛はあり得ない設定なので、投馬と音美の関係はどう変化していくのか。その辺りが2巻から徐々に描かれていくようです。
ここまで、タッチの登場人物は出て来ません。出てこなくていいわ~。40代のたっちゃんも南ちゃんも見たくない。シルエットすらいらない。MEISEIのユニホームの背番号1とか甲子園優勝の楯とかパンチとか、小道具から漂うタッチの匂いだけで十分にうまうまです。その方が妄想を刺激してくれるw
知ってる空気で、知ってるテンポで、何もかも既視感ありまくりなのに、マンネリではなくて面白いなああああ~。幸せッッ!!早く2巻を!!
“イケメンがキャッチャー” も約束事違反ではあるまいか。顔見せろ。
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