四月は君の嘘 7巻

四月は君の嘘(7) (月刊マガジンコミックス)
さよなら
ずっとずっと自分を縛り付けていた母の影との決別・四月は君の嘘7巻です。なんか色々と心臓が痛いです。どうしてこの作品を読むとこんなにも哀しく切なく、それでいて胸熱くなるのでしょうか。演奏家の溢れる情熱に触れて感情が高まるのと同時に、その情熱の源泉に触れる度、言いようのないもの悲しさを感じてしまいます。心をグラグラと揺すられる展開は7巻になった今なお変わりません!
さて、7巻のスタートはクライスラー「愛の悲しみ」の演奏シーン。序盤の感情を叩きつけるような荒い演奏が、次第に変わっていく。変えたのは、公生の中の母の記憶。母との思い出が、公生の演奏を煌めかせ、温かく包み込むような音を生み出させます。
それを見つめる紘子さん。彼女が思い出していたのは、公生の母・早希の言葉。
『私がいなくなったら公生はどうなるの?』
『あの子はちゃんと生活できるの?』
『音楽で食べていける?』
そこにあったのは、一人子供を残して先立たなくてはいけない切実な母親の姿。公生に必要以上に厳しくレッスンをしたのは、手に技術があればなんとか食べていけるかもしれないという思いからでした。病床での言葉がまた、泣けるのです。毎日ハミガキできるか、風邪ひかないか、ちゃんと野菜も食べるか、中学で友達ができるか、なんて本当に小さな小さな事を心配する早希さん。
私の宝物は 幸せになれるかしら
息子を案じる母親の気持ちが痛い。もうダメだ…。7巻は涙の予感しかしない。
さて、舞台上の公生は。
母親の亡霊は自分の弱さが生み出したものだと、本当は知っていたんだ…と思う公生。だからもうあの場所にその亡霊はいない。蘇るのは母親がピアノを教えてくれた幼い頃の記憶。
母さんは僕の中にいる
そうだよね ピアノは
抱きしめるように弾くんだよね

四月は君の嘘 6巻

四月は君の嘘(6) (講談社コミックス月刊マガジン)
弾こう
私達はピアニストだよ
過去の自分と決別し、再びピアニスト人生を歩み出そうと足掻く公生と、その再出発の背中を押す紘子さん。公生はガラコンをきっかけに一歩先へ進む事ができるのか、そして相方のかをりは…。最強コンビの演奏が楽しみな四月は君の嘘6巻です。
前巻で、母親の親友・日本屈指のピアニストの瀬戸紘子に師事する事になった公生。そして、ガラコンを控え、かをりと共に練習に励む日々。かをりが選んだ曲はクライスラー「愛の悲しみ」なんですが、練習も始まっているのに、公生はいまだに別の曲に変えたがる。それを不思議に思うかをりですが、実はこの曲には公生の複雑な思いがあり…。まず冒頭で、その理由が明かされます。
自宅で「愛の悲しみ」のピアノ版の楽譜を手にした公生は。
母さんの好きだった曲
母さんが
そして昼間のかをりの言葉を思い出します、「君がそんなにいやがるの なんでかな」。そして、その言葉に答えるようにつぶやきます。
『どうしたって 母さんを思い出しちゃうからだよ』
そうか。頑なに嫌がっていたのは、お母さんとの思い出が染み付いた曲だからなんだ。そして、思い出すと今でも涙が出る程に、公生にとって母親との記憶は、温かく優しい記憶と辛く苦しい記憶が、混在してせめぎ合っているんですね。
四月は君の嘘 5巻
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君がいたんだ
公生の2年振りのコンクールの行方とともに四角関係も気になる四月は君の嘘5巻です。
1曲目を正確無比な演奏で終え復帰を見せつけた公生から、再び音が消えたところで終わった4巻のその後。
公生の演奏は、また聴こえなくなった焦りから、音がバラバラになっていきます。その乱れは誰の耳にも明らかなほど。。公生は諦めまいと、かをりと演奏したあの時のように、全身で音をつかもうとするのですが、その頑張りを打ち消すかのように、公生の頭の中に再び現れる母親の幻。
聞こえないのは自業自得だと言う幻影の言葉は、そっくりそのまま公生が自分に対して思っている事なんですよね。あの日母親に投げつけた言葉が後悔となって公生の心に深く突き刺さっていて、そこを消化できない限り、頭の中の幻も消えないんでしょう…。
そのまま演奏はどんどん乱れて、やめちゃおうか・・・・という気持ちがよぎります。そして本当に演奏をやめてしまうのですが……… でもそれは諦めではなく、出直し。その時公生の頭の中にいたのは、あのコンクールの舞台に立つかをりの姿。もうね、公生の頭の中に、その姿がこびりついて離れないんですよ。そして、かをりが言った「アゲイン」。これが、公生のピアニスト人生のビッグバンだったと思うわ。その言葉で新しい公生が生まれたんだろうなあ。
公生は考えるんです。かをりはあの時、演奏を中断してコンクールが終わったにも関わらずなぜもう一度弾いたのか。それは何のためだったのか。かをりの気持ちを想像しながら、じゃあ自分は何のために弾くのか…と自問する公生。そして、再び鍵盤に向かう公生が見つけた答えは。
君のために弾こう

君のために弾く…!!きました、一芸のある人にのみ許される殺し文句・君のための◯◯!!(今回は別に言ってないけど。)
君のために歌う、君のために描く、君のためにゴールする。バリエーションは豊かですが、その「君のための何か」は、他人より秀でた何かでなければなりません。凡人レベルのそれでは、もらう側はどっちらけの切ない結末。言ったからには、絶対に超えねばならないクオリティラインがあると思うのです。気持ちが大事だよね♡とか可愛い事が言えない私ですまない。そんなわけで、かをりのために弾くのであれば、その底力をいかんなく見せつけてくれ!
まあ、もしここで公生がしょぼい演奏をしてしまっても、かをりは公生の思いを知らないので、せいぜい私が心の中でチッと舌打ちするだけですがw そんなわけで、期待に胸が高鳴りつつ成り行きを見守っていたのですが、君のためって言われたら誰でも恋落ちするレベルの素晴らしい演奏をするんです!!!あ~さすがの天才。
公生がイメージしたのは、かをりといたある日の景色。教室のチョークの匂い、ヒビ割れた窓ガラス、遠くに聞こえる運動部の声、桜の花びらの影、そして、かをりのかすかな寝息。
そんな、いきものがかりの歌に出てきそうな青春シチュエーション☆をクラシックにのせるって、想像を絶する素敵さなんだろう。もう私は何もコメントできないw
四月は君の嘘 4巻
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たった4分たらずの演奏が
私をピアニストにした
相座武士の優勝を確信させるような圧巻の演奏が終わり、さて、もう一人のライバル・井川絵見は
公生がまだコンクールに出場していた頃、TOP3の常連だった相座武士と井川絵見。二人は、常に1位に君臨する公生にそれぞれの強い思いを持っていました。
『俺の目標は海外でも ショパンコンクールでもありません 有馬公生です』
武士にとって公生は、抜くべき目標。
『私がここにいるのは あんたのせいだ』
絵見にとって公生は、自分の人生を決定づけた人。
ということで、二人にとって、公生が2年振りに参加しているこのコンクールは特別な意味があります。
武士の演奏は 誰が見ても武士がNO.1だ と先生が確信する程のデキでした。
次は、絵見の演奏。
かつては常にトップクラスだった彼女ですが、最近は予選落ちまで経験。しかし、『絵見は気分屋でね。ほんのちょっとしたことで 演奏がガラリと変わる』とは落合先生談。
絵見はステージに上がる前、鳥肌の立つ自分を見て。
こんなの久しぶり そうか

ムラっ気があるということは、今日ピークの波が来てもおかしくないということ。ピアノが合ってる 指が軽い 私は今日のっている…そして、誰もが言葉を失うような演奏が始まりました。