銀の匙 Silver Spoon 1 荒川弘 (少年サンデーコミックス)「マンガ大賞2012」大賞受賞作の銀の匙です。キャッチコピーは「汗と涙と土にまみれた青春物語」なんだとか。実際には、汗より涙より土より、家畜の糞にまみれていることが多い、まさにグレートネイチャー感たっぷりの高校生活!
札幌の都会育ちの八軒勇吾(はちけんゆうご)が、目標もなく大蝦夷農業高校 酪農科学科に入学し、酪農の厳しさや厳しさや厳しさに触れて成長していくストーリー。
何がすごいって、酪農を始めとした農業のディテールがものすごくきっちり描かれていること!奇を衒ったストーリーではなくて、直球ど真ん中。
そこには、ひ弱な都会者の度肝を抜く世界が広がっています。
まず、八軒の学校は広大。

これは学校の農地です。全体では一周20km…。東京の学校の400mトラック(それすら贅沢)なんて、犬の庭にもなりません。
ここで八軒くんは、様々な衝撃体験を積んでいきます。「北の国から」のジュンさながらに。。ただし、グレートネイチャーへの驚きではなく、ザ・命への衝撃。
ある時は、先輩が目の前でニワトリを屠殺し、
『スモークチキン、できたら食わせてやるよ!』とニッコリ。八軒は血しぶきに呆然。
またある時は、ニワトリが肛門から産卵するのを目の当たりにして卵が食べられなくなり、
『この学校は精神攻撃が多すぎる。』とぐったり。
確かに、素人は生々しさに卒倒するのかもしれません。。自分も、シメたばかりのニワトリを見て、キャー新鮮で美味しそう♡と言える自信はない。
とにかく、八軒たちの相手は生き物。365日・24時間休みはないわけで。
『おまえらは家畜のドレイだ!!』
ハイヒールの女王様がムチを片手におっしゃったわけではありません。
「命」と向き合う厳しさを様々な形で毎日体感する八軒。
獣医に会った八軒が、獣医になるために必要なことは?と聞いた時の、獣医の回答。学力、学費、体力、
『あとは 私の持論だけど… 殺れるかどうか。』言葉だけだとまるで任侠映画。
でも、極道の世界は遠くても、八軒が見てる世界は私たちの生活・ライフラインなんだよなーと思うと、なおさら深い。
殺る・殺らないの世界では、家畜に感情移入してしまうと後々ダメージが大きいことを学んだ八軒ですが、中にはこんな出会いも。

子ブタってホンッとかわいいですよね!映画になるくらいですから!
この中の一匹、ちょっと小柄で負け組の子ブタに八軒は思い入れてしまい、その子に豚丼と名付けます。
(ただし、この豚丼は名前通り三ヶ月後に食肉行きが決まっています…)
豚丼が本当に豚丼になった時の八軒の葛藤が今から見えるようです…。
でっかいどーな感動や涙や笑いがあって、とっても骨太なストーリー。まずは、豚丼の最後を見届けねば!という気持ちになります。
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富士先生はアームストロング大佐系@ハガレン