 | - 小山 宙哉
- 発売日 : 2012/10/23
- 出版社/メーカー : 講談社
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月面で会おうなんて上手くいかないんだ人生は!と月に向かって叫びたくなる宇宙兄弟19巻です。月のバックアップクルーとしての訓練が続くムッタと、復帰のための試験をパスしたものの次のミッションにアサインされない日々人。
始めの頃は、ちょいダメな兄貴の先を行くスーパーな弟の構図でしたが、月から帰還して以来、今度は日々人の戦いが続いています。その努力がどんな形で結実するのか、しないのか、が今巻の読みどころ。
ムッタ達バックアップクルーのデザートラッツでの訓練も大詰めを迎え、正規クルーと共に最後の訓練が始まります。
ピコと共に現れたのは、彼が開発指揮をとった
『車輪付きの “脚” “STITCH(スティッチ)” を組み込んだ新型着陸船(アルタイル)だ』。これは、今までの課題を解決すると同時に色んなメリットがある優れモノ。おぉ~ さすがピコ。
その操作訓練が終わり、ピコがビンスに言います。
『それにしてもまさか… 叶う日が来るとはな』『いつかリックが管制官になり 宇宙飛行士になったビンスに指示を送る そのビンスは… 俺の作った宇宙船に乗る』。リックの代わりに管制室から指示を送るのは、キャップコム担当のムッタ。本人の知らないところで、ビンスさんの彼に対する期待という名の要求が高まりそうな予感です!
そして、ムッタの同期であるケンジと新田にも、クリスマスプレゼントが。バトラー室長に告げられたのは、
『君たちクルーのミッションは 人類初となる 有人小惑星探査だ』なんと月よりさらに “先” へ行く試み!そのミッションを受けた直後、ケンジに二人目の女の子が誕生☆ 小惑星の名前にちなんで “安(あん)ちゃん” と命名されました。
ムッタも同期の仲間達もちゃくちゃくと先へ進む中、日々人の時間だけが止まっている。。家族とヒューストンで過ごす年末、日々人が月を見ながらこんな事をつぶやきます。
『なあ ムッちゃん もしかしたら… 俺はもう月に行けないかも』表紙の画の様に、空を見上げて親指で月を隠しながら。そして、
『俺の中からパニック障害が消えても… 周囲の頭ん中からは消えないんだ』
ああ、なんかリアル。。。一度貼られたレッテルは、なかなか剥がれないんだよな。ムッタは日々人に何も言えず、そのモヤモヤを抱えたまま、翌日からキャップコムの訓練がスタート。
バトラー室長は日々人の復帰のために、反対しているゲイツを会議で説得しようとします。ゲイツプログラムマネージャーは例えを用いて、日々人をこんな風に表現しました。
『“樽一杯のワインに スプーン一杯の汚水を注ぐと…… それは樽一杯の汚水になる”』。
悪役ヅラも手伝って軽い殺意を覚えますが、NASAがどんな小さなリスクもヘッジしなくてはならないことは、理解できる。確かに、チャンスを待つ宇宙飛行士は他にも沢山いるんですよね。
でも……… こんな世知辛いのは現実世界だけで充分だ(泣)二次元には夢と希望を求めたい~orz
ゲイツの決定を受けて、日々人を呼び出すバトラー室長。
『僕はもう宇宙へ行けないって そんな気はしてました』
日々人が立ち去った後の部屋で一人、苦渋の表情で机を叩くバトラー室長。
そして次の日の朝、日々人は姿を消します。
そのまま六日が過ぎ、その間ムッタは訓練に身が入らず、ビンスさんとの連携にも影響が…。誰にも日々人の行方が分からず、心配が募る中、ムッタにバトラー室長から電話がかかってきます。その電話で
NASAとしてはこの先 あえて彼を月ミッションに任命するような リスクを負うべきではないという結論に至った と聞くムッタ。そして日々人の復帰のために、ダミアン、フレディ、エディ・J、アズマの4人のベテラン飛行士が、目を付けられるのを覚悟の上で嘆願書に署名してくれた事を知ります。
ムッタはバトラー室長に自分の気持ちを伝えます。
『“NASA” に意思があるとして その目で見たらヒビトは不運な弱者に見えますかね?』
『俺の目で見たヒビトは真逆です』
『月の事故では暗闇の谷底から仲間を救い出し 最善の判断で無事生還しました』
『その後のパニック障害も もちまえの根性で克服して見せたんです』
『ヒビトは他のどの宇宙飛行士よりも 本当の恐怖を知っていて それを乗り越えた男です』『今のあいつは俺から見れば 最強の宇宙飛行士です』
電話を切った後の、
『私も… そう思う……!』というバトラー室長のつぶやきにグッときます。
益々集中力を失ったムッちゃんは、訓練の最中にまたもミス。もはや、ビンスからの信頼を完全に失いかける寸前…。
落ち込むムッタを新田が夕飯に誘います。話題は、彼の弟のカズヤについて。カズヤがある会社の入社試験で高い評価を受けたものの「大事な時にまた引きこもる可能性がある」ことを理由に落ちてしまったことを聞きます。そこでめげずに次へ進もうとするカズヤを見た新田は
『俺はもう何も心配していない。たまに世の中のつまらない考え方に残念な気持ちになるだけだ』と。間接的な、ムッタと日々人への励ましの言葉。
アスキャンの時の新田のように、弟からの連絡を待つムッタ。そこへ鳴り響く、宇宙海賊アバンギャルドの効果音=日々人からのメールの着信音!!

そこには、
俺 NASAを去ることにしたという決意と、
月面で会おうという変わらぬメッセージ。
宇宙に興味を持ち始めた小学生の頃
ムッタは、日々人と二人で宇宙兄弟アバンギャルドのラジオドラマを聴いた時の事を思い出します。
ムッタは灯りを消し、フトンの中にラジオを持ち込んでラジオに聴き入ります。フトンの中は宇宙となって、そこにステッド船長のセリフが響く
「月面で会おう」。

日々人のメールに、その時の記憶が蘇ったムッタ。
同じ頃、アズマに呼び出されたバトラー室長は、アズマから日々人の決意を聞きます。
『“アストロノート” から “コスモノート” って呼び名に変わるだけだよ って言ってましたよ 日々人君は』。ということは、ヒビチョフ再びか…!民間かロシアかな~と思っていたので、この展開は素直に嬉しい♪
日々人は諦めず、月を目指す。ひとまず安心を得たムッタは、我が身の危機に気がつきますw バックアップクルーとしてビンスの期待に応えられない状況を打開すべく、分かり合うきっかけになればとビンスを飲みに誘います。こんな所でサラリーマンのお家芸が飛び出すなんて!飲みニケーションは万国共通なんですね!
二人で飲みに行くつもりが、なんと自宅に招待されます!出迎えてくれたのは、綺麗で気が利く奥様と、スモールビンスw

食事を囲みながら、小ビンスがムッタに聞くんです。
『父さんは「宇宙に憧れる者は行かずしても必ず一度は宇宙を目にする」 って言うんですけど ないですよね?そんなこと』と。ムッタは
『…… いや… あるよ』と言い、
『真っ暗なね フトンの中で』
ピコの言う通り、なんの共通点もなさそうな二人にも “NASAにいる” という大きな共通点があります。この発言でビンスのムッタへの心情に少し変化が見られそう♪
そして、半年後
発射台で打ち上げの刻を待つビンスを乗せたアレスΙ(ワン)。そしてそれを観客に紛れて見つめるピコと、キャップコムとして管制室で見守るムッタ…!ここで19巻終了。
次巻では、月へ向かってそれぞれ歩みを進めるムッタと日々人が読めそうですね。コスモノートの面々も再登場しそうで楽しみです!
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南波父愛用の耳かきは螺旋型
宇宙兄弟 18 小山宙哉 (モーニング KC)この巻は何と言っても日々人が試験に合格して宇宙飛行士に復帰できるのか!?が最大の関心事!そして、当然復帰できるだろうという予想のもと(宇宙"兄弟"じゃなくなっちゃうし)、どれだけ感動的にその時を迎えちゃうの!?という期待で胸が高鳴ります!
試験の途中グリーンカードで動揺した日々人ですが、お守りのプリティドッグで持ち直し、なんとかトラブルを乗り越えます。
その時、管制室から日々人に意外な声が届きます。
『ようヒビト 聞こえるか』声の主は、共に月面に降り立った仲間のバディでした。バディは管制官に代わって日々人に試験の指示を出すことに。
そして、この人も。

船外活動のパートナーとしてダミアンが参加。
『ダミアンまで…来てくれたのか』
『当たり前だよ…
当たり前だ……!』
熱いチームメイト魂にうっかり涙しましたが、よく考えたら、この人はホント来て当たり前ですw
この粋な計らいは、ムッタから事情を聞いた仲間達が考えたものです。
ヒビトを救うために、ヒビトが一番幸福だった時のことを思い出させてやりたい…そんな仲間達の想いが日々人を後押しします。
順調に進む試験。日々人はこれまで自分を支えてくれた人たちを思い出します。
そしてついに、
俺はーー
宇宙飛行士ーーーー !日々人は、水中でぴょーんと跳ねてみせます。
そうです、ムーンジャンプ!!日々人、ついに復活(涙)
感動のジャンプシーンは、コミックで是非!
六太が駆けつけた時には試験は終了していて、日々人はこの笑顔。

六太の嬉しそうな、安心したような表情がいい!この2人はシャロン博士の言葉通りの関係になりましたね。
実は弟の失敗を望む兄…的ないやらしさがなく、読んでいて安心。
シャロン博士といえば、月面望遠鏡の新提案のため再びNASAを訪れます。
過去に指摘された数々の問題点を全てクリアした新案は前向きに受け入れられました。しかし、この企画に熱意を持てる飛行士がいるのか…
シャロンは言います。
『それなら大丈夫です
この願いを必ず叶えてくれると……
まだ子供だったムッタは約束してくれました』シャロンの夢を叶えるまであと少し。
さて、月を目指す六太はというと、いよいよバックアップクルーとしての訓練が始まります。
メンバーは、こんな感じ。

月に一緒に行くであろう仲間たちです。
それがとんでもなく個性的なメンバー。手前から順に、北斗晶の性格を持つ美女、自分大好きナル男くん、南米ノリのレゲエ野郎、むっつりモアイ。
ランニングひとつ集団でできないようなマイペースすぎるメンバーに、和を重んじる日本人代表六太は、自分がリーダーにならねば!と思ったりするのですが、あえなく撃沈。
このチームの6人目のメンバー、リーダーになるだろう人は、まだ合流していません。バトラー室長が、彼なら!と思う人物が、まだ首を縦に振ってくれないんです。
その彼の名は、エディ。エディはISSの大ベテランクルーで、亡きブライアンの兄でもあります。
エディとブライアンは、かつてこんな約束をしていました。
『試してみるか ブライアン』
『俺らが月に行ったとき 一緒に月面に並べよーぜ これ』
『うわぁ… それやりたい!』
結局、月に行けたのはブライアンだけで、約束を持ちかけたエディは月へ行く機会がなかった。引退の年齢をむかえようとしている今になってようやくチャンスが訪れたものの、今さら月へ行くなんて…と心が前に進まない。
バトラー室長は、あの超個性派チームをまとめられる船長はエディしかいないと思い、勝負をかけます。
『CES-51の事故の時 ヒビトが偶然月面である物を発見したんだ』
『月面であんたを待ってるかのようなーー ブライアンの置きみやげだ』
写真には、月面に立つあの置物。背中には、約束を交わした時の2人の写真が。
エディは心を決めます。
そして、超個性チームのメンバーの前に、チームリーダーとして現れるエディ。
その姿を見て、六太は思います。
一瞬にしてーー わかってしまった
リーダーというのはやはり、安心と興奮を同時にくれる
この人は俺たちのリーダーだムッタのチームは、これからエディの仏のリーダーシップで生まれ変わることでしょう。
エディが写真を見るシーン、いいですよね。グッときます!
日々人が月でこれ見つけた時、すでにこの話は考えられていたんですよね~、きっと。ブラボー小山先生!
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宇宙服はドレッドヘアも収まる。
宇宙兄弟 17 (モーニング KC)『六太とケンジのNEEMO訓練が終了し、月を目指す者が正式に決定!!決定に納得する者、決意を新たにする者、それぞれの訓練がスタートする。
一方、日々人はパニック障害を徐々に克服しつつあったが、「宇宙飛行士に戻るための試験」をクリアせねばならない。頼るべき存在は・・・ 実は一番近くにいる。』
(背表紙解説より)※ネタばれしています※毎巻読みどころの多い宇宙兄弟。17巻では、六太のNEEMO(ニーモ)訓練が終了、その結果が明らかに。そして、ついに日々人が再び与圧服を着て試験に挑む!
NEEMOでの仮想月面訓練が終了した六太。
『彼はこの海底20mでの2週間ー "他の誰よりも月面にいた"』審査官の言葉通り、訓練中の六太の意見や発想は、誰よりも月での生活をリアルに捉えていました。
六太はついに、月への切符を手に入れます。
共に課題に取り組んだケンジも納得の結果ですが、月に行けないとなったその時の彼の心境・・・
『わかってるー 当たり前と言えば当たり前。
いつだって積み上げていく過程は途方もなく崩れ去るのは一瞬だ。
それでその後ー どうするか・・・』こういう場面では、選ばれなかった側に共感してしまいます。
費やした気力や時間が報われることばかりじゃないと知っているけれど・・・当たり前って、本当に厳しいですね。普通なら、ヤケになったり、逆に抜け殻のようにもなりそうですが、結果を受け止めてその後どうするかを考えようとするところはさすがケンジ。新田の今後も気になります。
一方、日々人は、ロシアから続けてきた秘密訓練を終え、バトラー室長に告げます。
『俺にもう一度チャンスをください。
宇宙飛行士に戻る準備ができました』
あ~やっとここまできた!!長かったな・・変なかぶりものして訓練していた日々が懐かしい。。
試験を控え不安を抱える日々人はブライアンの墓へ。そこで偶然吾妻さんに会います。二人にとって兄貴のような存在だったブライアン。壁にぶち当たった時は彼に話しかければいい、それでもダメなら・・・と吾妻さんは続けます。
『本当の兄貴に話せばいい。お前にはいるだろ"もう一人の兄貴"が』それまで、六太には知られずに治すつもりだった日々人ですが、全て六太に打ち明けます。月から帰って以来パニック障害であること、そのために前線から外されていること、試験直前なのにタクシーで発作が出たこと。そして、試験でうまくいく気が全くしないこと・・・
それを聞いた六太、自分ならその試験から逃げそうな気がする、と前置いてから
(六太の自己分析は毎度素敵です)
『俺がここでやめとけっつっても絶対やるんだよ。
心ん中に"絶対"を持ってる奴だからな』昔から"絶対"を持ってそれを実現してきた日々人を、六太は信じているわけですね。そして、別れ際の言葉。
『宇宙服は俺らの味方だ』ほんと、そうだよなぁ。その言葉になんの異存もありません!(`_´)ゞ
ついに皆が見守る中、日々人の宇宙飛行士復帰をかけた試験が始まります。
何事もなく、すんなり終わって欲しい・・・・と誰もが願う中・・・・
でた~~~! グリーンカード!!!しかもそれは・・・・、というところで17巻は終わります。
成功を、誰もが願ったわけではない。という大人の事情に満ちた感じが、どこの世界にもいろんな思惑が渦巻いているね〜と思わされます。急に宇宙飛行士を身近に感じる不思議w
負けるな日々人!
18巻は2012年06月22日発売予定(モーニング KC)です。
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