 | - 羽海野 チカ
- 発売日 : 2012/12/14
- 出版社/メーカー : 白泉社
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どこへ行っても 自分が一番歳上になってから
いったい もう どれくらいたつだろう表紙、渋いですね。表紙、渋いですよね。3月のライオン “彷徨の第8巻” です。本屋さんでちゃんと新刊の所に並んでいたのに、認識できなくて探してしまいました。一応、18歳の高校生が主役のマンガですけれども、そんな事を微塵も感じさせないこの画… まいっか、ヤングアニマルだし!w まだ8巻というのもちょっと驚きです!
今巻では、宗谷・桐山の記念対局と柳原・島田の棋匠戦という2つの見どころがあります。
まずは宗谷VS桐山の天才対決から。
島田さんが宗谷名人を「大きな翼の白い鳥」と表現するのですが、そのシラサギっぽさ、よく分かります。真っ白で何の色も無い感じ。存在感の大きさ。静かな羽音。1羽で飛来するところ。そのイメージを人間に落とし込めるところが、羽海野先生ですね。
もちろん、力の差は解りきっている。
だが「勝つため」以外の心で飛び込んだら 一瞬で首を吹っとばされるそんな気迫を込めながら、淡々と指していく零。「よく戦っている」と周りに言わしめる程の指し合い。ところが、そこで悪手を指してしまい、
指した7四歩から手を離す時 指の表面を引きはがすような感覚があった
手を離した瞬間に 敗着だと気が付いた
指の表面を引きはがすような感覚… なにそれ、かっこいいな。凡人には分からない感覚なんだろうな。
その敗着に気が付いてからの、零の切り替えが良いんです。
もし ここからの手を全て最善手のみで指し通せたとしたら この将棋はどこまで行けるのかなぁ…って そこからは、余計なものが消えてどんどん手をつなげていく無我夢中の状態に。そして、敗けた後の感覚さえ、今までに経験した事のないような清々しく楽しい気持ち……。
対局の経験を通して、零目線で語られる宗谷はまるで別の世界の、人間ではない何かのようです。俗っぽさがなさすぎるというか。なんだろう。解脱した僧侶のようなものでしょうか。
帰路、同じ新幹線になる零と宗谷名人。零は台風が直撃し仙台で新幹線が止まるハプニングから、偶然彼の秘密を知る事になります。
新幹線が止まった事にも、周囲のざわつきにも気づかず眠っていた宗谷を起こした零。状況を説明しても、何も届いていないような表情。
すべてのピースが合致した
この人の周りから音が消えて見えたのではなかった この人の中に音が無いのだこの人の耳には もう 何も届いてはいないのだ
零があれこれ手続きして無事にホテルに宿泊できた2人。そこに会長から零の携帯に電話がかかってきて、宗谷が約10年前から「聴こえる」と「聴こえない」を行き来している事を聞きます。
そうだったのか…。聴こえていなかったんですね。孤高の人である事の一因は、ここにもあったのか。元々の性格も、ちょっと風変わりだというのは会長の話から伝わって来ますが。この宗谷名人の秘密は、明らかになったところで今後の展開に影響はなさそうですが、宗谷という人物の奥行きが増しましたよね。
白い鳥の要素に加えて、年齢不詳の雰囲気、知れば知る程俗物感から遠のいて、神様に近づいていく宗谷名人。どうでもいいけど、私はあの色素の薄さやサラサラの髪が好きです!!
さて、もう1つの対局は、島田VS柳原の棋匠戦です。こちらはもう泥臭く暑苦しいの一言!!
柳原棋匠・66歳。
「現役A級・タイトル通算14期、化け物の1人だよ。ここまで来たら もののけのたぐいだ」とは島田談。宗谷は神の化身のような「大きな翼の白い鳥」で、こっちは「もののけ」w どちらも人間ではないっちゅーことですね。
66歳ともなると背負うものの重さが違ってきます。同年代の仲間はほぼ引退。
どこへ行っても 自分が一番歳上になってから いったい もう どれくらいたつだろう
一緒に戦ってきた 仲間も いつしか 一人消え 二人消え……
後に 残ったものは 年老いた身体と 託された このおびただしい数の たすき だけ……
そして、引退した同年代のカメラマンが言った
『俺から仕事をとったら何が残ってんだ?』『まるで 焼け野っ原にいるみてぇだ』という言葉が深く心にのしかかってきます。
島田さんは島田さんで、なんとしてもタイトルを獲って故郷に錦を飾りたいという気迫に満ちています。そんな2人の全身全霊のぶつかり合いが
渋いッッ熱いッッ!!それはもう、私のような小娘か何か言えるようなソレではないです。
簡単に勝敗が決まるはずもなく、一進一退の戦局が続いた末、島田さんに流れが大きく傾いた時、柳原棋匠が “敗け” を感じるんです。「自分から将棋をとったら何が残るのか」と思いながら、先に引退していった人達の言葉や思いが頭の中を駆け巡ります。そして。
駄目だ!!
わからんが これは 俺が絶対に手離しちゃいけねぇもんだ!!
オレが担いで 届けるものだ!!
精一杯頑張った人間が 最後に辿り着く場所が
焼野ヶ原なんかであってたまるものか!!
その後の手がまた、皆を驚かせます。
『じじい 若々し過ぎるだろう その手はよ』と島田さんが悪態をつくほどに。この戦いを見つめる解説役の零と二階堂は。
激闘だった 棋士ならば誰もが こんな将棋を指してみたいと 心の底から思わずにいられないようなそして169手の大激闘は幕をおろし、柳原棋匠は「永世棋匠」を獲得。
うおぉぉー島田さんまた敗けた!!!くそっっ なんて敗者が似合うんだww わたくし、島田さんが大好きであります。このキュンとくるくたびれた感じがたまらないです。アウトローなくたびれ感ではなく、実直なくたびれ感がね、心のツボを突いてくるんですよ。このマンガ読んでいて島田さん嫌いなんて方いるんですかね?絶対いないですよね?(←過信)島田さんが勝つのは最後の最後でいい。その時は、地味で泥臭い勝ち方なのに涙でページが見えないぜってくらいの大感動を宜しくお願いしたい。それまでは、ギリギリの敗戦を見せつけて欲しいですw
最後は、川本家登場でシメ。
商店街のお祭りに川本家が出店を出すことになり、零が手伝いに行くんです。その時の様子。

細かいところまでしっかり描かれたこういう画、好きだなぁ。まるで映画のワンシーンのよう。東京の下町の空気が伝わってきます。
8巻はがっつり対局でした。といってもそれを通した人間ドラマが軸のマンガなので、戦いそのものが主題というわけではないですが。零くんの青くさい葛藤も大好物ですが、おっさんの皆さんのソレは読み応えありまくりで、なんだか重たい丼ものを完食したような読後感でした!次の巻までの数ヶ月、お腹空かずに待てそうです。
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「だが 断るっっ」by島田
3月のライオン 7 (ジェッツコミックス)新人王を獲った零だったが、いじめられているヒナのために、自分が何もできないと勝手に思い込んでいた。一方、ヒナは学校で心が挫けそうになりながらも、懸命にいじめと戦っていた。二人の様々な思いが交錯する中、物語は新たな展開を見せる。(裏表紙解説)3月のライオン「戦いの6巻」に続くのは「勇気の7巻」!表紙は零のメガネをかけるヒナちゃんです。
6巻で新人王となった零。その決勝で対戦した順慶のエピソードから7巻は始まります。
順慶は坊こと二階堂と準決勝で対戦。その戦いで彼は悪役認定、さらに読者の二階堂人気を一気に高め、ついでに零の怒りに触れて決勝でコテンパンにされてしまったちょっぴり可哀想な人です。
彼は二階堂のような折れない心も、零のような天賦の才もなく、プロ6年目にして行き詰まっていました。先に進めず、リミッターの効いた努力しか出来なくなった。それが、二階堂や零と対戦したことでもう一度、終わりのない努力の世界に戻りたいと強く願うようになる…
もっと歪んだ人かと思ったら、ある意味とっても普通で懸命な人。一般人が最も共感しやすい人なんじゃ!?ついでに、レース鳩を育てている心優しいオタクです。
さて、修学旅行に行っていたヒナちゃんはというと。
5巻の最後に零くんが京都の河原に現れたのが記憶に新しいです。
夢かと思ったの
知らない街でひとりぼっちで どこに居たらいいかも解らなくて 心細くて 泣きそうになっていたら
髪がくしゃくしゃになる程走って 息を切らした あなたが立っていたから
零くん完全にヒーローです。ヒナちゃんを救いましたね~。感動で心のポエム詠んじゃってます。これはもう恋落ちせずにはいられない!
零ちゃんが隣に座ってくれただけで いつもの川辺りに いるような気持ちになった
知ってる場所にいるみたいに落ちついた
ヒナちゃんは東京に帰ってから、まるでヒーローにでも会ったように、あかりさんに零くんのことを夢中で話します。
これを機に、次第に元気を取り戻すひなた。しかし、繰り返されるいじめ騒動に疲れていたのは生徒だけではなく、ついにはストレスから担任の先生が倒れてしまいます。
ひなたのクラスには新しい担当がつくことに。この先生は、この問題を見て見ぬフリしないんです。生徒にも親に対しても。学校側が本気で介入して来たことで、いじめ騒動は一応の解決をみます。
一方の零くんですが、新人王のタイトルを獲り、なんと宗谷名人との記念対局が組まれることに。その上、タイトル戦並にどーんと派手にやるといいます。
史上5人目の中学生プロ棋士で新人王を獲った零は、いつの間にか将棋界の華として頼られる存在に。棋匠の「頼りにしてる」(=注目と人気でスポンサー取って♡)の一言が零の心を刺激します。
そして学校では、先生や部活の先輩が新人王のお祝いをしてくれる。
そんな状況に零は…
何だろうこれ… いったいぼくは いつのまに出ていたんだ?
ーーこんな明るいところに……
誰かに頼りにされたり、誰かが気にかけてくれたり、そんな人とのつながりを実感して涙腺やられた零くんです。
この後、これを忘れないようにと日記帳を買う姿に、こっちの涙腺もやられちゃいます。けなげすぎ(涙)
さて、ついにポスター完成。

どーんと派手に行われる記念対局の盛大な前夜祭。沢山の人で溢れ、沢山のスピーチが続き、慣れないことばかりの零は、盤の上だけが戦いではないプロの世界の厳しさを体感します。
ーーそして対局の朝が来た
いよいよ、いよいよ始まる宗谷名人との対局!
しばらく将棋より周辺ストーリーが盛り上がっていましたが、ついに、がっつり将棋で嵐が起きそうです。
早く8巻出ないかなー。ヤングアニマルに手を出してしまいそう…
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